お米マイスター全国ネットワーク

Guts for Sports もっと強くなる!

「ごはんは太る」の勘違い

お兄さんごはんを食べなくなった日本人
でも肥満は増えてるぞ

図

戦後、日本人の食生活は、お米を主食として魚や野菜を食べる「高糖質食」から、肉や油を多く摂る「高脂質食」へと急速な勢いで変化してきました。日本人の肥満が増えた背景には、こうした食の高脂質化が大きく関与しています。実際、日本人のお米を食べる量は、表のように年々減少しており、昭和30年代後半に比べると約半分になっています。

では、お米、つまり炭水化物(糖質)を食べないとどうなるか。ズバリ、太りやすくなります。なぜなら、人間の脳は糖質のみをエネルギー源とするため、血糖値が一定の高さまで上がらないと、脳の視床下部にある満腹中枢が刺激されず、食欲が満たされにくいからです。そのため、炭水化物抜きの高脂質食ではいつまでも満腹感が得られず、ついつい食べ過ぎてしまうことになります。そのうえ高脂質食は「脂肪に合成されやすい」点からも「太りやすい食事」といえるのです。反対に満腹感の得やすいごはんなど糖質食は「太りにくい食事」なのですが、なぜか、「ごはんは太る」という誤った認識がまかり通っているのが現実です。

おねえさんでも、ごはんを抜くと実際、
体重が減りますけど…?

図

たしかに、ごはんなどの糖質を減らすと体重はすぐに減ります。しかしこの場合、減ったのは脂肪ではなく、筋肉や肝臓に貯蔵されている糖質燃料のグリコーゲンとそれに結合している水なのです。

人間の体は、糖質をとても必要としています。なぜなら糖質は、生命活動の根本である脳と筋肉のエネルギー源だからです。通常、摂取した糖質の70%は筋肉で消費され、20%が脳で使われます。そのため体は、糖質不足で生命活動が危険に陥らないよう、非常食として筋肉や肝臓のグリコーゲンに糖質を保管しておくのです。当然、炭水化物を少量しか食べなかったり、炭水化物抜きダイエットなどにより脳や筋肉のエネルギーが不足すると、非常食のグリコーゲンに保管された糖質が分解、消費されます。糖質は水と結合して保管されているので、糖質の3~4倍にあたる水分も同時に脱水するため、見かけの体重が減少するのです。

●実験結果①
ごはん抜きダイエットじゃ成果も水の泡?

1日405Kcalの超低エネルギー食ダイエットを4日間続けた実験では、減った体重の3~4kgが水で、脂肪はごくわずかしか消費されませんでした。糖質は脳の唯一のエネルギー源であるため、再び糖質を摂ると体は糖質の4倍近い水分子と結合して優先的にグリコーゲンに蓄えるので、すぐに体重は元に戻ります。つまり、ごはんを抜くダイエットでは一時的に体重を減らすことはできても、脂肪を減らすことはできないのです。

●実験結果②
本当はダイエットに最適なごはん食!

図

アメリカで行われた炭水化物摂取量と肥満症の関係を明らかにする大規模な調査研究では、適度な炭水化物の摂取が体重過多や肥満症の改善に関係していることが示されています。18歳以上の4,451名を対象にした健康調査において、BMIと炭水化物摂取量の関係を、総エネルギー摂取量、活動時のエネルギー消費量、年齢、性差、喫煙習慣、教育レベル、所得レベルなどのデータから統計的に補正して解析しています。その結果、低炭水化物摂取(47%以下のエネルギー摂取)が、過体重、肥満症の発症に有意に関与していることが明らかとなりました。逆に最も肥満のリスクが低かったのは、47~64%のエネルギーを炭水化物で摂取した場合でした。

この実験では炭水化物を主体にした高糖質食が、食後の満腹感を高めるとともに、エネルギー消費量(食事誘発熱産生)を増加させることを証明しています。つまり、ごはん食はむしろダイエットに最も適した食事なのです。(図①)

ごはんはこんなに素晴らしい

お兄さんだから、ごはんを食べても
太りにくい

図

同じエネルギー量を摂取した場合でも、ごはんなどの高糖質食と比べ肉や油の多い高脂質食の方が肥満しやすいことが、スイスの研究グループによって明らかにされています。この実験(図②)では、食物が体にどう消費されるかを調べています。

まず、9日間にわたり毎日、対象者に通常の1.6倍にあたる脂肪を摂取させましたが、体内で脂肪の消費量は増加しませんでした。つまり、余分に摂取した脂肪は、ほぼ全部が脂肪組織に蓄積されたのです

次に、9日間にわたり、混合食(糖質、脂質、タンパク質のバランス食)の過剰摂取をしたところ、糖質の消費量は増加し、余った糖質はほとんどが筋肉と肝臓のグリコーゲンに合成され、残りは熱として代謝されました

これらの結果は、高脂質食が高糖質食より圧倒的に肥満を引き起こすことを裏付け、ごはんのような高糖質食の方が太りにくいことを示しているのです。

また、他の研究では長期にわたる高糖質または高脂質食が死亡率に与える影響を調査しました。その結果、60%程度のエネルギーを糖質で摂った場合、高脂質・低糖質の食事に比べて死亡率が低いことが明確に示されています。(図③)

図

おでぶさんでも、糖質は摂りすぎると
糖尿病も気になるしなぁ。
いったい、どうすりゃいいの?

更にスイスの研究チームは同じような過食実験の結果から、「ヒトの肝臓はラットと異なり糖質を脂肪に変換する能力はほとんど無い」という論文をアメリカ生理学会で発表しました。その総説論文では、

① 余剰のタンパク質、糖質はその日のうちに代謝されるが、脂肪は蓄積される。
② 糖質を脂肪に合成するには約25%のエネルギー消費が必要になる。
③ 中性脂肪はエネルギー消費なしで体脂肪に合成される。
④ 高糖質食条件下でも脂肪合成は1日10gを超えることはない。
と結論付けています。

ヒトはラットやモルモットと違って脳が発達しているために、脳が多くのエネルギーを必要(摂取した総エネルギーの2割近くを消費)としています。しかも脳は糖質しかエネルギーとして使えないので、余分に摂った糖質を脂肪に変換してしまうと、そのエネルギーを二度と脳で使えなくなるから困るわけです。そのため、ヒトは余分に摂った糖質を肝臓と筋肉でグリコーゲンとして蓄えます。それに対してラットには脳がほとんど無いので、余ったエネルギーをすべて脂肪として蓄えます。

我々日本人は、ごはんを主食とした栄養・ミネラルバランスの良い伝統的な和食が、肥満・メタボリック症候群の予防・改善に非常に効果的であることを世界に証明しています。また、肥満はほぼ全ての生活習慣病の温床であり、糖尿病の主な原因でもあります。肥満を解消するために最も効果的なのは運動ですが、その理由は筋肉がエネルギーの大食漢で、最も大量に糖質と脂肪を消費する“臓器”であるからです。糖質の7割が筋肉で使われ、2割は脳で消費されます。心臓や腎臓など他の臓器は摂取した糖質のわずか1割を使っているにすぎません。筋肉でしっかりエネルギーを消費していれば、インスリンとは独立した生理的メカニズムで糖は代謝されるのです

つまり、インスリンを作るすい臓に負担がかからないようになるのです。逆に運動不足で筋肉がナマクラになってくると、すい臓は一生懸命インスリンを作り出して、筋肉の糖代謝を促進しようとするのです。その結果、すい臓に負担がかかり衰弱し、坂を転がるように糖尿病へと突入していくのです。

図

ごはんはスポーツの強い味方

お兄さんスポーツでのスキルアップには
ごはんが欠かせない

図

スポーツをする時には多くのエネルギーが必要ですが、筋肉に蓄積されたグリコーゲン(糖質のエネルギー)の量が、運動能力、特に持久力の強度に影響を与えます。これは、1967年に発表された論文で、筋肉のサンプルを取り出すバイオプシー法を考案したスウェーデン人の生化学者、バーグストロームの有名な実験結果(図④)によるものです。

これは被験者に食事内容を変えて運動を行ってもらい、その能力を比較した実験です。各被験者がその最大運動量の75%にあたる激しい運動を疲労困憊まで行った時、「炭水化物一切無しの高タンパク・高脂肪食」の場合、その持続時間は全員が1時間程度でした。次に「炭水化物50%、脂肪とタンパク質の混合食」の場合は、高タンパク・高脂肪食のほぼ2倍にあたる120分程度の運動を持続できました。そして、驚くことに「炭水化物100%の高糖食」を食べさせた場合は、平均して150分もの運動を持続し、中には、実に高タンパク・高脂肪食の4倍以上もの運動を持続できた被験者もいました。

こどもスタミナがないのは
食事が問題ってことなんだ

図

この実験は、同じ人間でこれだけ劇的に運動持続力が変わるという、実にクリアなデータです。今日では、「カーボ・ローディング」といって、グリコーゲンをより多く体に蓄えるために、高炭水化物の食事による運動プログラムがスポーツ選手の間で普及していますが、その効果を実証した最初のデータといえるでしょう。

消耗の激しいスポーツ選手では、最低でも1日の食事の70%を炭水化物で摂らないと筋肉のグリコーゲン量が元に戻らないのです。

運動強度の高いスポーツでは、筋肉に蓄積された糖質のグリコーゲン(エネルギー)が最も大事な燃料源となります。先ほどの実験結果からもわかるように、運動前日にこのグリコーゲンをごはん食などで十分に蓄えておくと、持久力が通常の数倍も維持できます。持久力は運動開始前の筋グリコーゲンの蓄積量とほぼ比例するため、筋グリコーゲン量が多くなればなるほど持久力が増加するのです。

また、アメリカで行われた実験(図⑤)では、低炭水化物食(摂取量40%)で3日間にわたり2時間ずつ運動をした場合、高炭水化物食(摂取量70%)の場合と比べ運動機能の回復力が著しく低下しました。典型的なオーバートレーニングの症状で、こうなると脱落するか、続けても怪我をする可能性が出てきます。

この結果からも明らかですが、スポーツ選手は、炭水化物によって糖質を十分に摂らないと運動エネルギーが不足してしまい、筋肉と脳に悪影響が出てしまい、とてもスキルアップどころではありません。十分な炭水化物を摂って脳にエネルギーを補給し、筋肉のグリコーゲンを常に満たしておくことがとても大事です。燃料切れではとても勝負になりません。

おばあちゃん元気で長生きしたいけど
スポーツはかえって体に毒では?

運動といっても過激なスポーツやマラソンばかりではありません。身近な運動である「歩行」は安静時の3倍ものエネルギーを消費する運動強度があり、こまめに歩けばエネルギー代謝が3倍もアップする効果的なエクササイズでもあるのです。

最近の研究では、運動には免疫機能を高める作用があることが明らかにされています。運動中に分泌されるβエンドルフィン(快感と多幸感を生むといわれる)は、免疫をつかさどるリンパ球のT細胞を増殖し、ガンと戦うNK細胞の機能を高める作用をもっています。さらに最近では、運動をすると記憶や学習能力を司る脳の「海馬」に栄養を伝達する遺伝子が発現することが明らかになりました。

これは脳由来神経栄養因子といわれ、認知症を予防するうえでも非常に重要な役割を果たすことがヒトのデータで証明されています。また、適度な運動をすることで記憶力がよくなり、学習能力も高まることが報告されています。しっかりごはんを食べてスポーツや運動をすることで“からだ”と同時に“脳”も発達するのです。

図

トップに戻る